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No.9-不滅の旋律-

昨日、アクトシアターで上演中の「No.9-不滅の旋律-」ソワレを観劇しました。

事前に題材がベートーベンだと聞いたり、見たポスターのビジュアルから、シリアスなストーリーなのかと思っていましたが、
実際は、人間ベートーベンの悲哀を描いた喜悲劇でした。

前評判で聞いた通り、主人公ベートーベンと深く関わる、マリア(今回の劇作のフィクションで、実在の人物ではないそう)を演じていた、大島優子さんが良かったです。

勝ち気でありながら、慈愛に満ちた目でベートーベンを見つめる時もある、夢の中にいるような女性ですが、彼女が演じると、不思議と真実味がありました。

また、そのマリアの姉役のマイコさんの声が素晴らしくて、その声を聞いているだけで、何か、心が満たされるような気持ちになりました。

ストーリーは、意外にも(失礼!)普遍的なテーマを含んでいて。

主人公 ベートーベンは、義務感で人を愛そうとする。
そのことに気が付いているのは、恋人ヨゼフィーネとマリアだけ。

父親が上手にできなかったことを、自分はなんとしても上手くやり遂げて、父親を越えて見せたい。
ベートーベンのそんな思いが見てとれました。

彼は、女性ならば、案外誰でも良いのか、という態度をとってしまうのは、
つまりは、相手のことが好きだからではなく、自分の為に誰かを愛そうとしているからなのかも。。
そんな、ベートーベンは哀れで滑稽、だからこそ愛しい存在でした。

役者は皆、力量があり、見た目も麗しい人が揃っていて、なんのストレスもなく、物語に没頭することができました。

マリアの義兄を演じる、山中崇さんの与える清涼感
物語の狂言回し、発明家を演じる片桐仁さんの軽妙さ
ベートーベンが亡霊に悩まされる父親と、その父親にウリ二つの医師 2役を演じる、田山涼成さんの存在感

挙げればキリがありませんが、全ての役者が物語の推進力になっていました。

ただ、欲を言うならば、ベートーベンの2人の弟、ニコラウスとカスパールにもっと見せ場があっても良かったのでは、と感じました。
役者(加藤和樹さん、施鐘泰さん)良かったので、少しもったいないように思いました。


同じ役者に、同じ台詞、同じ動きを何度も当てはめるのは、演出家が役者の力量を信じて、試しているのでしょうか。

マリアの「えっ!?」の台詞のバリエーション
ニコラウスの「兄さん!」の台詞のバリエーション
ベートーベンの父の笑いながら立ち去るシーンのバリエーション
ベートーベンがピアノの鍵盤に拳を叩きつけるシーンのバリエーション

それは、何度も何度も繰り返し現れるので、音楽的な効果を意識しているのかしら、と考えながら観ていました。

吾郎さんの演技は、いつも安定感があり、観ていて危なげに感じることはありません。
やはり、今回もそうでした。むしろ、初舞台の大島優子さんに胸を貸しているように見えました。
彼女の導火線に火をつけて、その爆発力で舞台をさらに大きな成功に導こうとしている。。

越えられないと心の中で思い込んでいるものの幻におびえて、まどいながら生きる、というテーマは
普遍的で、その哀れさを、吾郎さんは、人間ベートーベンを通じて表現されていました。

苦しみ、もがいたのに、結局父親と同じ過ちを繰り返してしまう。そして物語の終盤、ベートーベンは甥カールに許してもらうことができますが、彼自身は、父親のことを許さずに終わってしまいます。
そこが、ベートーベンの人間らしいところなのかもしれません。

豪華でスケールの大きな舞台装置も見ごたえがありました。
公演期間の序盤で、まだこれから、変化を起こしそうな予感。
チケットは完売していますが、できれば、もう一度観たいです。

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